退屈だったのでミントにリタリンを10錠ほど飲ませてみた。昨日までの虐待・殴打にミントは顔を腫らしてぐったりした様子だったが、2,3分で急に元気になりひたすらしゃべり続け、けらけらと笑い出した。
「おかしいですわ、おかしいですわ、あはははは」
 もっともすぐにクスリが切れて、元のように部屋の隅にうずくまってしまったが。
「おんなじテレパシストじゃないか。ただ、俺の能力はお前のそれのように指向性を持っていないけれど、他人の意識を受信できることに変わりはない」
 俺が慰めてやったにもかかわらず黙って俯いているので、俺は必死になって太平洋戦争のニューギニア戦線で部下を殺して喰った陸軍中尉の話を念じてやった。この話はおととしの終戦記念日に勝手に何者かが俺の脳の中のシナプスを発火させ、時空を越えて意識が1944年のソロモンに繋がったときに得たものだ。
 ミントは俺の念を受信したらしい。いつものように耳をふさぐようなしぐさをして見せた。神軍平等兵をなめるな。