2004-10-01から1ヶ月間の記事一覧

第五日        愛(2)

僕はその海をよく覚えていなかった。だから海のほうへ行くわき道の全てに立ち寄り、丹念に調べた。 観光地を外れた県道は海岸に従いうねり、断崖にあってはまるで引っかき傷のような道筋で先に続いていた。僕はまるで低速域のなっていないバイクを走らせ、少…

第五日        愛(1)

http://map.yahoo.co.jp/pl?nl=31.22.34.332&el=130.51.23.393&la=1&sc=8&CE.x=202&CE.y=369 せっかく朝早くテントを撤収、バイクに荷物を積み込んで出発したというのに、佐多岬へ向かう有料道路は8時までゲートが開かなかった。あと30分以上もある。門の…

第四日国分―指宿―枕崎―加世田―吹上―鹿児島―桜島―国分

http://map.yahoo.co.jp/pl?nl=31.29.51.427&el=130.25.14.499&la=1&sc=7&CE.x=315&CE.y=463 「日本最南端…」 雪城さんが呟く。JRの小さな駅だ。 「いやー、全く見事な無人駅で」 開聞岳を望む、見通しの良い平地にJR最南端の駅、西大山駅があった。 「可愛…

第三日 北郷―日向―小林―霧島―国分

目が覚めると6時を過ぎていた。昨日は早かったのに、よく寝たもんだ、そう思って隣を見ると雪城さんはまだぐっすりと眠っていた。静かで規則正しい寝息を立てている。余りにも無防備な寝顔には何の苦痛もないようで、そのことは僕をとても安心させた。雪城…

第二日大分―別府―(やまなみハイウェイ)阿蘇―高千穂―北郷村

とりあえず米を炊かないと。 コッフェルに米をいれ、水を張る。 「水加減は?」 「適当」 僕はコッフェルに指を突っ込んで、水の深さを計った。米の抵抗を感じ、さらに指を進めると底にあたる。指が何処まで潜ったかを確認して、引き抜いた。ちょっと水を足…

第二日大分―別府―(やまなみハイウェイ)阿蘇―高千穂―北郷村

http://map.yahoo.co.jp/pl?nl=33.14.11.622&el=131.17.28.285&la=1&fi=1&sc=7 水分峠からやまなみハイウェイに入る。最高所、牧の戸峠までのんびり上っていくと、霧は晴れてきたがやはり空は曇りだ。 ちょっと気分を出して、車体を倒してコーナーを軽く攻め…

第二日大分―別府―(やまなみハイウェイ)阿蘇―高千穂―北郷村

朝、雪城さんに肩を揺すられた。 一瞬会社に遅刻するような気がして慌てて起きてしまう。そんな僕を雪城さんは笑った。ぼんやりしていたが顔を洗うと頭がすっきりした。朝6時、ほぼ定刻にフェリーは大分港についた。 フェリーを利用するときはバイクは特だ…

第二日(船中泊)―大分―別府―(やまなみハイウェイ)阿蘇―高千穂―北

「あまり揺れないのねえ」 「ん。瀬戸内海だからね。それに、今日は風もないし海も穏やかだ」 2等船室はがらがらだった。12人が横になれる区画を一区画、僕たちだけで使うような有様で。まあ、2人だけなので隅っこのほうに腰を落ち着けたのだが。 風呂か…

第一日(大阪―神戸〜(船内泊)

「もうじき、世界が滅ぶの」 雪城さんのその言葉は、真実だと思う。僕が彼女と過ごした一年半。彼女の言うことは僕の全てだった。彼女の言うことはうそではなかった。結果として少々異なっていても、彼女の誠意には嘘はなかった。 殊に人の生き死にに関わる…