2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

晴子さんからの手紙(完結編)

「何のって…」 からん。晴子が引っ張り出した肉に何かが引っかかっていた。それがこん、と音を立てて台所の硬質な床に落下した。 Mは晴子の顔を引きずるようにして目をそらし、落ちたものを見た。 チョーカー。十字架のデザインのチョーカーだ。 あのチョー…

晴子さんからの手紙(10)

―あの白いのはなんだろう。Mには見覚えが無かった。 まあそのことはMには関係ない。問題は目の前の鍋に毒物があるかないかということだった。なにしろ何度も言うようだが相手はきちがいだ。おまけにさっきこの女が監禁した女の子がいて、なおかつそれを殺…

晴子さんからの手紙(9)

「…なんや、観鈴。眠ってしもたんかいな」 さっきまでの剣幕が嘘のように、晴子はやさしい声を出した。気絶したのかそれとも事切れたのか佳乃はぴくりとも動かなくなった。 もし死んだのだとしたら。Mは震えた。俺はいままさに殺人を目撃したのだと。そう想…

晴子さんからの手紙(8)

「アウアウアー」 見た目だけではない、佳乃は精神も酷く痛めつけられているようだ。神尾観鈴とは髪型が違うし、髪の色も違う。その髪の色や髪型には見覚えがあった。活発で明るい彼女は校内でも人気者で、実はMは何回か佳乃を手淫の際に思い出したことがあ…

晴子さんからの手紙(7)

笑顔と凶器。まさにきちがいに刃物、といったところだが、そのこっけいな言い回しとは裏腹に事態はまさに急迫している。なんと言うかにこやかな殺意と言うか、笑いながら刃物を向けられるとそのまま晴子にぶっすり気楽に刺されてしまいそうで、Mには恐ろし…

晴子さんからの手紙(6)

「あの俺、帰り、帰、帰っ」 Mは立とうとして肘を床についた。身を起こそうとしたが目の前になにかがおかれている。 「――――?」 出刃包丁。 その肉厚のある包丁は晴子が持っていた。晴子は包丁を握り締めたまま卓袱台に手を乗せていた。 そしてその包丁、す…

晴子さんからの手紙(5)

それまでの観鈴に対するいじめも相当過酷なものだったが、その件のあとのそれは倍化した。休み時間になると必ず髪にへばりついたガムをはがす為にトイレにいく観鈴がいた。あれで泣いていないのは不思議だった。 「ちょっと…おいっ」 「おまえジャンケンでま…