死
はやく心が死にますように。
きちがいがばれませんように。
苦しまずに死ねますように。
死んだらすぐにみんなが私の事を忘れてくださいますように。
永い眠りを妨げられることのございませんように。
はあ。この短冊はメテオさんには見せられない.放棄放棄、とくずかごへ纏めて放り投げたのをつかんだ細い、うで。
メテオさんが、いつの間に、家に。
かさり、かさりとメテオさんの手が丸められた色紙の短冊を広げる.僕には目をそむけることしか出来なかった.この後のことは、想像に難くない。暴風のような彼女の感情の発露、そして不規則な魔術行使。
星力。
僕は身体を丸めた.ごめんなさい、ごめんなさいとメテオさんの方を見ることもせずただおびえた。
−―っ。
メテオさんの指が背中にさわる。僕は情けなく震えてしまって、声が出た.ああ、とかうう、とか、とにかく情けない声だった。
そしてその後.以外にも、僕の背中に伝わってきたのは、メテオさんのくぐもった声だった.言葉ではない.それは、嗚咽だった.
「メテオさん」
おそるおそる僕は声をかけた.彼女のしおらしくさめざめと泣くすがたに次第に罪悪感と、そうして(あさましいことだが)安心感をえた.
メテオさんの懐から短冊が落ちた.このようなもの、何処で。そう思って拾った。
「彼の者のいのちの安らかなることを。満ち足りた未来を。わたくしの星力に替えて、云々」
最後はどこかの国、あるいは他の星の言葉のようになぞめいた文字だった。
皮肉。気高き少女の他者への一心な思いは僕のような下賎の生まれのもののせいで台無しに。
空には天の川。空一杯に広がる星星の下で、僕はメテオさんに一緒に死んでくれるよう頼んだ。あたりが暗くてメテオさんの表情は星明りでは読み取れなかったが、うんと頷く様子だけは分かった.