実は、ともよちゃんはあまり外に出ることができない。独りで外に出ようとすると吐き気がしたりめまいがしたり、まわりの人に襲われそうに感じるのだそうだ。
 僕と一緒に出かけるときでも、すこしの人ごみでも真っ青な顔になってくる。
「大丈夫ですわ」
 などと気丈に言うものの、時としてお手洗いに駆け込み、すこし胃の中のものをもどしたりする。先月嵐山まで遊びに行ったときも道端で吐いてしまって、僕は背中をさすってあげることしかできなかった。ごめんなさい、ごめんなさいと吐しゃ物でむせながら謝り続けるともよちゃんがあまりにも哀れで、僕は服が汚れるのもかまわず正面から抱きしめてあげた。ともよちゃんは僕を気遣って離れようとしたのだけれど、結局僕に抱かれるままになり、そして嘔吐をやめた。(ともよちゃんの体から出たものだ、汚くなんかあるものか!)
 僕たちの心が通い合ったのは、そのころからだと思う。