祝日。明日はクリスマスなのでともよちゃんを驚かせてあげようと考えるのだけれど、いい案が浮かばない。そうこうしているうちともよちゃんが明日の献立なんかを紙に書き留めている。なんだ、ともよちゃんのほうが一枚も二枚も上手だなあ、明日はクリスマス用に何か考えてるのだ、と、机の上のともよちゃんの前の紙を覗き込んだ。そして。
 その紙を見てはっとした。
「ともよちゃん、それは、いけない」
 きょとんとするともよちゃん。
「しんぶんのチラシの裏に…明日の献立と何を買うか書くなんて」
「あら、せっかく真っ白なのに勿体無いですわ」
「でも」
 なんだか本来ならともよちゃんはこんなせせこましいことをするようなことはなかったと思うので、僕の稼ぎが少ないことや、あれやこれや考えて落ち込んだ。そんな僕をともよちゃんは敏感に感じ取ったらしい。
「あなたがどう考えてらっしゃるのか、存じ上げませんですけれども」
 毅然とした声。ともよちゃんはすこし目を吊り上げていた。怒っている。
「浪費という行為は醜いですわ。私はそれは昔から思っていましたの。もちろん昔は自分で食料品を買い求めることなんてなかったでしょうけれども、こうすることが貧しいことだとは思いませんわ」
 そうしてともよちゃんは四角い紙束を取り出した。チラシをはがき大の大きさに切って、クリップで頭を留めてある。
「むしろあなたのほうが浪費癖がひどいですわ。プロテインとかグルタミンとか」
「ごめんなさい」
「それにBS放送とかスカパーとか。いったい何をごらんになってらっしゃるんですの?」
「いやその」
「いったい何を」
「…茜」
「何ですの?」
「何でもありません」
「とにかくろくに何も見ていないのでしたら解約なさったほうがよろしいですわ。勿体無いですもの」
「ごめんなさい」
「そもそも物質的豊かさには限界がありますの。そのことはあなたもよくご存知のはずですわ。それを私に気を使うだなんてわたくし、わたくし…」
 ともよちゃんの声がすこし、こもった。顔を上げてともよちゃんを見ると、ともよちゃんは涙を流していた。
 ぐずぐずと。そのあとはともよちゃんも言葉にならなかった。
「ひどいですわ。そんな言い方…」
 僕はずいぶんと彼女を傷つけてしまったようだ。どうして、僕はこんなに駄目なんだろう。