大道寺知世からの手紙(1)

 漸く筆記用具を使う許可が出たのでこうしてお返事を書くことができるようになりました。寒い毎日が続いています。どうか、掛け布団をお使いになってくださいませ。ストーブをお使いくださいませ。わたくしのことであなたが心を痛めていらっしゃることは、ようくわかりました。あなたのお心が身に染みるようで、わたくしにもつらいのです。これ以上、自らを痛めつけるのはおやめくださいませ。あなたの苦しみはまたわたくしの苦しみでもあるのです。わたくしの苦しみがあなたの苦しみであるのと同じように。
 無謀な運動もどうかおやめください。なぜあなたは何事かあると、すぐにあなた自身を苦しめることで救われようとなさいますか。そのこと自体はなんの解決にもならないのです。苦しみは苦しみでしかありません。あなたの精神の安寧こそわたくし幸福だと、どうか気が付いてくださいませ。寧ろわたくしにとってもあなたの苦痛はひどく切実で、つらいのです。
 病院のかたにはずいぶんと親身になって頂いています。ですから、何の心配も要りません。いいえ、このようにわたくしが言うのもなにやらおかしなことなのはわかってはいるのです。すべてあなたのお世話になっている今の私がこのような生意気なことを、。けれども、先ずあなたを安心させなければならないと、そのことばかりが気がかりで気がかりでなりません。
 どうかご自愛くださいませ。
 どうかお食事だけでもきちんとお取り下さい。せめてそれだけでもお約束いただけないと、わたくしも安心して休むことができません。
 今から採血その他、検査がありますが、取り急ぎ、これだけはお伝えしたくて筆を取りました。



                   ともよ