外泊許可が出ると聞いて、とても喜んでいる。今さっき先生からそう聞いて、喜んで病院を出てすぐのファミリーレストランでこの手紙を書いているんだ。この分だと、退院もお花見には間に合いそうだね。本当によかった。
 外泊の日は、朝一番で迎えに行く。今からとても楽しみだ。
 ええと、すこし暗い内容の本だったかもしれないので、今のともよちゃんにはどうかと思ったんだけれども、熱心に読んでくれたみたいでほっとしています。今ともよちゃんが読みかけている本はすこし時代も違うし登場人物のトーンも違うので楽しく読めると思う。数え切れないくらい読み返したなあ。でも、本も根を詰めて読むと疲れてしまうので、ほどほどにね。君は時々一生懸命になりすぎるから。
 仕事のことではちょっと心配させてしまったみたいだけれど、とりあえず落ち着きました。あのだるい感じは1日で抜けてくれたんだけれど、次の日はよく眠れたよ。眠ることも薬の効果のうちなんだろうけれども、眠くて頭が重かった。何とか身体を動かしてたら直っちゃったけれどもね。ほんとうに、ともよちゃんはよくあんな状態で食事を作ったりしてたね。
 
 ともよちゃんに何があったのか、僕にはわからない。でも、ともよちゃんはなにか大切なことを忘れてしまっているんだね。君が言うように、思い出したほうがいいのか悪いのか、僕にはわからない。けれどもそのことで思い煩うのは僕としてもいたたまれない。ぼくも、どうしていいのか正直わからない。出来ることがあったら何でも言って欲しい。
 僕はともよちゃんに幻滅したりはしない。もし君に、人を激しく憎むような一面があったとして、僕はそれを否定しない。むしろそうしたところが君にもあるということがかえって僕には貴重なことのように思う。僕は時々ともよちゃんを天使のように穢れない存在と考えてしまう悪い癖があって、そのことを僕はひそかに恥じている。
 いいところも、悪いところもある。それらをひっくるめて、君なのだから。それに、そうした君が言うような嫉妬や妬みといった負の感情は人には絶対に備わっているものなんだとおもう。それを押さえて、ごまかして生きていることのほうが、よほど恐ろいことだと思うよ。
 えらそうなことを言ってしまったね。ごめんなさい。

 
 何処か遠い島かあ。いいね。いっそ海外なんてどうかな。退院祝いに、ちょっと考えてみようか。
 では、外泊の日を楽しみにしています。