大体八割くらいの仕上がりですね、出し抜けに雪城さんに言われたので何のことかと思う。
 別になにか競技的なスポーツをしているわけでも無し、仕事においても俺は基本的にいてもいなくてもいい奴なので八割もなにも関係ない。
「も、もしかして俺の主力艦の対米英比率が第二次ワシントン海軍軍縮条約で八割まで認められたのか?」
「一体何の話?」
 首をかしげる雪城さん。しかし俺の耳は屋外から聞こえる群集のざわめきと怒号で満たされていく。
 ばんざーい、ばんざーい。
 皇居周辺は奉天入城以来の人出でごった返し、新橋―品川間では蒸気機関車が走り出す。エロゲーの鬱エンディングで自殺者が出る、堀部安兵衛高田馬場で「お前がキチガイだ!」と叫びながら大暴れ。
 トリップしている俺の二の腕に雪城さんはそっと無痛注射器を押し付けて耳元でささやくのだ。
「お前の洗脳が八割方終了してるんだよバーカバーカ」