雪城さんにオナニーを見つかった瞬間は、寧ろ彼女のほうが狼狽していたように思う。
 雪城さんときたら顔を真っ赤にして、酷くどもりながらきょろきょろとあっちを見たりこっちを見たりして手足をばたばたさせるのだ。しなやかで美しい、まさに女性、そう、すらりとした細い腕は女の子と言うよりも女性であることを俺に意識させたし、最近急に丸みを帯びてきた腰回りなどはそれを補強すると言うよりもむしろ彼女が女性であることを強烈に周囲にアピールしていた。
 そのことは喜ばしいことのはずなのだが、さすがにこのときばかりはそうした雪城さんがおんなであるという事実を恨めしくすらおもった。
「ななっ、なっ、な…!」
 ことばにならない雪城さん。無理も無い、俺の部屋にいつものように入ってきたら、股間に粗末なアレを握ったまま、片手にエロ同人、パソコンのモニターにはエロゲー美少女(ツンデレ)、エロフィギュアなどを総動員していた俺がいたのだ。
「ふけ…ふけっ!ふけつ…」
 ぱくぱくと酸欠の魚のように口を開閉する雪城さん。俺は背筋に冷たいものが走るのを感じていた。
 言い訳は聞かない。ただただ俺が部屋で自慰をしていたという事実のみが、俺と雪城さんの間に横たわっているのだ。
「不潔!変態だわ!」
 漸く我に帰った雪城さんが俺をののしり始めた。俺は硬直したまま、分けもわからず怒鳴り返した。
「うるせえこのエロビデオ女!お前のガキの頃の裏ビデオ出演の話、そこらに撒くぞ!」
 
 瞬間、沈黙が走った。あっという間に動きを止め、崩れ落ちる雪城さん。
「うっ…うううううううっ」
 あっという間に彼女の狼狽は嗚咽に変わった。
 俺は言ってはいけないことを言ってしまったのだ。
 取り返しがつかない。そう考えて俯く俺の視線の先には,まだ勃起したままのチンコが握られていた。