人外魔境雪城園

ジャアクキングとの戦いで両腕の手首から先を喪ってしまった雪城さんはそれでも特殊学級には行かずに通常の授業を受けていたのだがもう限界のようだ
なにしろクラスのいじめが酷い
「やぁい雪城のテンボー」
「だいたい字も書けないのにノートも取れないじゃん」
ベローネ学園のいじめは酷い
ラクロス部など上級生の下級生に対するいじめが酷くて廃部になったほどだ
男子部に所属している漏れはそのたび女子部に駆けつけて(盗聴している)雪城さんを愚弄するクズどもを恫喝して黙らせるのだがそれでもおさまる気配はない
「雪城きもいんだよ」
「死ね、だいたいお前頭もおかしいだろバーカバーカ」
今日も盗聴器のイヤホンから聞くに堪えない罵声が聞こえてきた
さっそく渡り廊下を走り金網を越え女子部へ
今日こそは我慢ならない。教室に入ると真空飛びひざ蹴りを雪城さんの前にいたチャパツの頭の悪そうな女に喰らわせた
「ふざけんなよ、ふざけんなよ美墨!おまえ雪城さんが何でこんな目にあったのかわかってんのか!」
「いったあー!このやろう、藤P先輩にいって〆てもらうからね」
「上等だコラ、それなら俺はお前の弟を犯す」
「なっ…!なんで弟」
「藤村とかこええじゃん。さすがに漏れでも女とか小学生なら勝てるもん」
「卑怯者!」
「うるせえ!だいたい美墨、お前雪城さんが何でこんな目にあったのかわかってるのか!いやお前が一番よくわかってるだろ!雪城さんはジャアクキングとの…」
「やめて。いいの村田君」
そのとき、雪城さんのか細い声が聞こえた。振り返ると、両腕に包帯をまいた雪城さんがだらりと両腕をカラダの前に垂らしてぎこちなく笑って立っている
「でも雪城さん…」
「いいのよ村田君。さあ、自分の教室に帰って。授業始まっちゃう」
すべてを受け入れ、慈母のような笑顔を浮かべる雪城さん。けして恐れず、後悔をしない選択をしたからこそこうして毅然としていられるのだ
漏れは自分の感情に身を任せたことを恥じた
「いいか美墨。雪城さんに何かあったら、お前の弟をボコる。あとあのたこ焼き屋の屋台の車をパンクさせる。お前の親父の会社に”アイフル池田支店の村田と申しますが、美墨様をお願いできますでしょうか”って電話してやる。おまえんちの上の階に引っ越してやる…」
「村田君…」
「ああごめんなさい雪城さん」
漏れはもう一度雪城さんを見た。痛々しい戦いの傷跡。しかしそれでも雪城さんは決して恨み言を言ったりしない。

漏れは絶対に雪城さんを守るんだ。雪城さんが自らを犠牲にして地球を守ったように漏れは雪城さんを守るんだ