日記4
知世ちゃんは可愛い。綺麗だ。およそ女性が手に入れる天分、といったものをすべて持っている。成熟した大人になれば、きっと美しい人になるだろう。幸せな結婚をして、家庭をなし、すばらしい人生を生きるのだろう。
「まあ、ずいぶん遅いお帰りでですのね」
なにかお湯を沸かそうとする知世ちゃん。
「ああ、紅茶ならいいよ」
「紅茶じゃなければ…その、緑茶でも」
「良いんだ。ごめんね。ごめん。」
「そんな、謝られても、わたくし…」
「うん。…」
僕は知世ちゃんの髪を梳った。戸惑っているような表情の知世ちゃん。
「ごめんね。ちょっと…会社の人と、ね」
「お付き合いですね。もう、しっかりしてください」
結局知世ちゃんの手を借りて僕が寝床に運ばれることになった。
「知世ちゃん」
「なんですか」
「君は、強いね。ほんとうに。つよいね」
知世ちゃんは「お休みになってください」とつぶやいて、僕の布団をがばっと顔までかぶせてしまった。