ともよちゃんに綺麗な空気を吸わせてあげたかったので、なんとなく山のほうへ向かうことにした。ともよちゃんはすこし多めにくすりを飲んでしまったのか、眠ってしまった。くうくうと心地よさそうに眠るともよちゃんをみていると、とてもこの子が病んでいるようには思えず、そうしてそれだからこそ不憫に思えた。
 山道に入ったところでともよちゃんが目を覚ました。
「いけませんわ。眠ってしまいました」
 恥ずかしそうに言う。きっと愛らしいだろうそんなともよちゃんの様子を見ていたかったのだけれど運転に忙しく、透き通った声を聞いただけだった。
 峠に小さなほこらがあった。なんとなく休憩することにして車を止めた。僕はそのほこらに一心に祈った。ともよちゃんをどうか助けてくださいおねがいします、と。傍らではともよちゃんも何か一生懸命に手を合わせていた。なにを心に思い浮かべているのかはよくわかっているので、僕はそれに気がつかないふりをして手をあわせ続けた。