ともよちゃんに休息を勧められた僕は、今日は完全に身体を休めることにした。でも、あまりよくないことだったのかもしれない。会社の人に誘われて、ずいぶんと酒を飲んでしまった。
 僕は飲めないわけじゃないけれど、このところともよちゃんと一緒にいるので控えめになっている。だから、ちょっと飲みすぎてしまったのかもしれない。

 僕は酷く酔っ払って。まったくだらしないありさまで、部屋に戻った。
 とても気分が悪かった。無性に腹が立った。
「ともよちゃん」
 僕ははたから見てもよほどなさけない有様だったのだろう。
「まあ、まあ」
 ともよちゃんは小さな身体で、僕の肩を担ごうとした。華奢な身体で、僕の身体をささえきれるわけないのに。
 僕は。本当にどうかしていた。ともよちゃんを突き放してしまった。本当に、どうかしていた。
「なんだよ、ともよちゃんはいつも優しくばかりして!どうして僕を罰してくれないんだ!いつもいつもいつも情けないことばかりやっているのに。惨めな生き方しかしていないのに!汚い、よごれきった性格なのに!何でいつでもそうやって」
 僕は玄関先でへたり込んで、泣きながら怒鳴った。きっと近所にも聞こえていたと思う。
 ともよちゃんは僕に突き飛ばされたショックで、すこし動揺していた。軽く突き飛ばしただけなんだけれど(言い訳だ!)、きっと精神的なショックが大きかったんだと思う。それでも。
「いったい、どうされたんですの?なにがありましたの?」
 おそるおそる聞いてきた。
 会社の人とお酒を飲んで、そうして、みんなが其の場にいない奴の悪口ばかりを言っていた。何かというと自分が人よりえらいんだ、出来がいいんだ、と主張する奴。怠惰なくせにそれを改めようともしないで、自分が社会に認められていないのは、社会が間違っているからだと訴える奴。
「ともよちゃん」
 僕はともよちゃんを抱きしめていた。きっと強く抱いてしまったので、ともよちゃんも痛かったと思う。それでもともよちゃんはじっと黙って僕に抱かれていてくれた。
「ごめんなさい、突き飛ばしたりして。ごめんなさい」
 本当に惨めで、泣いた。ともよちゃんは困ったような顔をしていたけれど、最後は笑顔で。
 僕の頭をやさしく撫でてくれた。