夕食後、ともよちゃんと「男たちの挽歌」を見る。すこしともよちゃんにはショッキングな内容かなあ、とも思ったのだけれど、たまにはアクションモノもいいかなあ、ともおもった。ともよちゃんはマークが2丁拳銃で乗り込むところでまあ、とかきゃあ、とか悲鳴みたいなものをあげていたけれども、途中からはすっかりストーリーに取り込まれていたようだ。シンプルなストーリーは、ともよちゃんには物足りないかとも思ったのだけれども。ラストの銃撃戦は食い入るように見ていた。
「面白い映画でしたわ。銃撃戦も迫力がございました。怖いものは嫌いですけれども、男の方がこうしたものを好まれるのもなんとなくわかるような気がいたしました」
 僕はもしかするとともよちゃんが楽しめないかと思ってただけに嬉しかった。
「でも、どうしてこの映画を急にごらんになりましたの?取りためているプロジェクトXとか、そのとき歴史が動いたとかございますのに」
 それだけじゃないんだよ。アニメが。アニメが見たい。エロゲーがしたい。でもともよちゃんに嫌われてしまうのでおおっぴらには見れない。視聴も遅れ気味だ。
「これじゃアニメ討論室の管理人だ…あ、いや、なんでもないよ。そのう、すこし」
 僕はなんだか口がすべった。
「小説を書いていて、その参考にしようかと」
 言って、しまったと思ったけれども遅かった。
「まあ」
 ともよちゃんは目をまん丸に見開いた。ああ、興味を持たれてしまった。
「驚きましたわ。そんなことをなさっていたなんて。よろしかったら、見せて」
「見たら死ぬ」
「え?」
「もしともよちゃんに見られたら、死んでやる。ここから飛び降りる」
「・・・わかりましたわ、無理強いはいたしません。いつか、見せてくださいね」
 ともよちゃんは僕から発せられるオーラに本気の何かを感じ取ったらしい。真顔で答えた。
「うん」
 気まずい沈黙。
「あの、それで、参考になりましたの?」
 ともよちゃんが気遣わしげに聞いてきた。
「うん。やっぱりガンアクションはジョン・ウーだね。かっこいい。参考にと言うか、いいなあ、2丁拳銃」
「まあ、それは。ストーリーとかは…」
「そこだよ!あの映画は決定的な間違いをおかしている!」 
 急に大声を出したのでともよちゃんがびっくりして後ずさる。
「まあ…なんですの…」
「キットだ。なんだって」
「あの」
 もうともよちゃんの声は耳に入らなかった。
「なんだって男にいろいろ過去を詰られたり償いをしなきゃならんのだ!なんで弟なんだ!あそこは妹だろう!それも血が繋がってないんだ!それで、もう昔みたいに呼び捨てにしたりしたら”その呼び方やめてください”とか言われるんだ。うそつき呼ばわりとか卑怯だとかいろいろ言われて…」
「でもタイトルは男たちの挽歌って…」
「それは邦題だよ!そんで、僕が死ぬときに”ごめんなさい、おにいちゃん”って思いっきり後悔しながら泣いてくれるんだよ。全くもう、それが出来ていれば。あれ?ともよちゃん?」
 僕が熱弁を振るっている間にともよちゃんはこっくりこっくり居眠りを始めてしまった。
「コレからが本題なのに…」
 僕は無念さを胸にしまいこみつつ毛布を運んできてともよちゃんにかけてあげた。