赤穂浪士の討ち入りの日にフセインが捕まるというのもなかなかおつな話だなあ、などと思う。
 ともよちゃんはあんまりイラク情勢とかを話題に乗せることはない。第一、食事の時にはテレビを消してしまうので、あんまり時事問題を話すことはない。もっとも、僕があまりにも政治や経済に疎いというのもあるのだけれど。それに、僕の話ではレベルが低すぎてともよちゃんには太刀打ちできないかもしれない。
「テストはどう?」
 などと聞いてみるが、もちろんともよちゃんのことだ、ぬかりはあるまい。大丈夫ですわ、と落ち着いた返事が返ってくるだけだ。一年ほどのブランクがあったのだが、その間も彼女はきちんと勉強していた。むしろ周りよりも勉強ができるのではないだろうか。
 最近はともよちゃんも遅くまで起きていることがある。睡眠薬にもそれほど頼らなくてよくなったようだ。それはいいのだが、月曜日は君が望む永遠があるのでいつもどきどきする。
 今日も…正直なところ、やばい。
「ともよちゃん、早く寝ないとお肌によくないよ」
「ともよちゃん、テスト勉強もほどほどにね」
 しかし彼女はにっこり笑うだけだ。自分の姑息さが情けなくなる。
 
 あと2時間。水月さんが、水月さんがあ。あああぁ。