一人になって物事を考えたりすると、時々悪いほうへ悪いほうへ考えてしまったりすることは、僕にもある。だから、そんな時おなかに溜め込まないでそうして書きたいことを書いてくれたら、そのほうが僕は嬉しい。それにともよちゃんが几帳面だからそうしてその病院にいるというのは、おそらく事実なんじゃあないかと思う。もっと自分に甘くなってもいいんじゃないかな。
 君が入院したことは、やむをえないことだったんだ。君は病気だったから。その苦しみは僕が完全に理解することができなくても、ほんの少しでも想像することはできる。
 来年、再来年?馬鹿を言っちゃあいけない。もっとずっとずっと、その機会が与えられるだと僕は思っている。もし君が望めば、だけれども。
 学校なんて、一年遅れても、大丈夫だよ。いくらでも遅れなさい。学校ではすこし寂しいかもしれないけれども、帰ってきたら僕がいるから。だから心配しないで。
 元気出して。
 
 
 佐々木さんの様子が落ち着いたのは、私にとってもとても嬉しいことでした。なんだかともよちゃんの手紙を通して、すこし彼女に痛々しさを感じていたんだ。今の彼女もすこし寂しい佇まいなんだけれど、でも満ち足りた時間を過ごしているんだろうか。
 それが幻想に過ぎなくても、こころ穏やかな日があるなら、それで救いになるのかな。
 ごめん、すこし軽はずみなことを言っている。

”純粋なこと、懸命なことは罪悪なのでしょうか。”

 ともよちゃんはこんなことを言っていたね。すごく切ない言葉だった。彼女を目の前にすると、そういう言葉が出てきてしまうんだろうか。
 僕もともよちゃんの純粋さ、懸命さをずっと見てきたよ。君はこういうことを言うと必ず顔を真っ赤にして俯いたけれど。
 そうしてその姿を美しいと思っていた。それは決して罪なんかではないと思う。世の中が間違っているなんて阿呆みたいなことは言いたくないけれども。ただ、一途な思いが他人に届かないことは多々あるのだなあ、とは思う。人の心はさまざまだから。
 
  
 
 ともよちゃんの手紙、ぜんぜん愚痴っぽくなんて感じなかったよ。手紙を出すことをためらったりなんてしないで下さい。