葵ちゃんは強い(その11)
「ああっ!藤田先輩!今日も来てくれたんですねっ!」
放課後葵ちゃんが何事も無かった様に漏れを神社で待っていた
意外に思うかもしれないが 練習に入る前の葵ちゃんは天使のようにやさしいんだ
「朝は…ちょっと調子に乗りすぎちゃいましたね(^^ごめんなさい」
などと言うような言葉がでてくるように 葵ちゃんは人格が入れ替わったりしているわけではない つまりやさしい葵ちゃんも 漏れの首をしめて殺そうとしてくる葵ちゃんもどちらも葵ちゃんなんだ
漏れはどうして良いのか良くわからない それに漏れはこのころには あの怖い葵ちゃんが必ずしも嫌いというわけではなくなりつつあったんだ むしろ好きかもしれない
「お、おう…今日もがんばっていこうぜ」
坂下との試合まであと何日もない 葵ちゃんの猛特訓がはじまった
放課後の練習には琴音ちゃんは顔を出していなかった もっとも実際の練習になると琴音ちゃんのできることは少ない きっと空手部の偵察にでも行っているのだろう
激しい実戦形式の練習は2時間にも及んだ 朝錬をやってなおこの練習量だ
実戦形式といっても本当に戦うわけではない 相手として漏れがいたが 本当にやったら漏れは多分三秒で殺されただろう これは冗談でも何でも無いことがすぐに証明されるのだがそのときは知る由もなかった
だから葵ちゃんはサンドバッグに向かったり 漏れがミットを構えたりした
パンチの練習にはほとんどついていけなかったが キックミットを持っているだけなら ほぼ立っているだけで済んだのでなんとかなる…と思ったがそのころすでに常人のキック力をはるかに上回っていた葵ちゃんのまわし蹴りはミットの上からでも十分に漏れを打ち据えた
そのキックでちょっとカウパーがでそうになったのは内緒だよ(*´Д`)
そんな練習のあと大汗をかいていた葵ちゃんが血を吐くような声で言った
「ああ、やっぱり駄目だ!私には筋肉が足りない!」
「あ、葵ちゃん…足りてるよ(;´Д`)この上ないほどに」
そんな漏れのとりなしを葵ちゃんは一にらみで否定した
「何を言ってるんですか藤田先輩!こんな足じゃ、こんな脚力じゃ坂下先輩にも綾香さんにもぜんぜん及ばないんです!どうにかしないと、どうにか…」
「葵ちゃん (;´Д`) だから物凄い足をしているよ君は」
葵ちゃんはとにかく焦りまくっていた 限られた時間 設備 そんななかどうにかして勝つための方策を探していた
その焦りが悲劇を生んだんだ なぜその場で気がつかなかったのか
「とにかく練習をします。スクワットをします」
葵ちゃんはキック力をつけるため下半身のウェートトレーニングの定番スクワットをやる事にしたようだ 漏れは神社の裏に隠してあるラックやプレートを運ぶのを手伝った
「葵ちゃん、もう今日は凄くたくさん練習をしたから、このうえスクワットなんてきついことは…」
葵ちゃんはきっと漏れをにらんだ (;´Д`)
そして何も漏れには言わず なにかぶつぶつと独り言を言いながらバーとプレートをセットした
1セット目 バーのみで20回 2セット目 20キロプレートを両方につけて計60キロでゆっくりと8回 勿論お尻が地面につくくらいまで深く曲げる 誰が見ても文句の無いフル・スクワットだ
3セット目 さらに10キロずつプレートをつけ 80キロで3回 10キロプレートを20キロのプレートに付け替え 葵ちゃんはラックに100キロのバーベルをセットした
「…(;´Д`)」
正直しゃれにならない重さだ
葵ちゃんの体重はこのとき増えに増え 50キロは軽く超えていたと思う それでも全く脂肪というものが無く圧倒的なフィジークを手に入れていた
勿論肉体美を手に入れるのもムキムキになるのも葵ちゃんの目的ではなかったとはいえそれはすごい体だった ただ普通の人が見たら引くと思う 後になって知ったのだがこのときすでに葵ちゃんの生理は止まっていたんだ (;´Д`)
しかしいかに葵ちゃんが人間離れした肉体を手に入れつつあったとはいえ自体重の倍近い重さのバーベルのスクワットだ
「葵ちゃん (;´Д`)そのう」
「なんですか!いま話し掛けないでください」
漏れが何か言おうとしても葵ちゃんはキレるだけだ
そしてバーベルに向かいバーにもたれかかるように上体を預けて何かをぶつぶつ言っている 漏れは聞き耳を立てた
「綾香死ね、死ね死ね死ね死ね」
「…(;´Д`)」
そしてきっかり2分後 葵ちゃんはスクワットのメインセットに入った
100キロのバーベルスクワットだ 金属製のプレートが震えるたびにこすれあってカチャカチャと音を立てる
その音色を楽しむように葵ちゃんはスクワットのレップスを重ねてゆく 5、6、7…数える漏れが怖くなってくるような葵ちゃんの表情
唸り声 叫び
「12、13、14…」
見ているこっちが気分が悪くなってくる 葵ちゃんのブルマから伸びた2本の足がしゃがみ 立つ動作を繰り返すたびにどんどんとパンプアップしてゆき太腿やふくらはぎに血管が浮いてくる 筋肉の分かれ目がくっきりとしてきた
「17、18、19…20!」
葵ちゃんのスクワットは終わる気配を見せない
顔は歪み息ははあはあと熱に浮かされたみたいに早い しゃがみこむたびにふるふると太ももが震えよろよろと立ち上がるのだ
葵ちゃんの身長はわずかに153センチ 長いオリンピックバーに比べると滑稽なほど小さい
しかし着実に葵ちゃんはレップスを繰り返した
「32、33」
見ているこちらが気分が悪くなってくる
なんで葵ちゃんは自分の体に此処まで残酷になれるのか 漏れは本当に吐くような思いで葵ちゃんを見つめたよ
「くるす…がわ…あひゃかへや!ころしゅううううう!」
ちょっとみさくらがはいった葵ちゃん 50回を超えてもなお終わらない もはや人間の限界を超えている
結局葵ちゃんは54回というとてつもない回数をこなしてバーをラックに戻したよ(;´Д`)
「ああ、ハアハア、やっぱり、息が、もち、ません、胃がむかむかしてきました、気もちわる…はあ」
余りにも強い脚部への負荷のため血液が下半身に集まっているのだ 結果頭は貧血状態となり葵ちゃんの吐き気を催したのだろう 実際葵ちゃんがトレーニング中に吐くことはこれまでにもあったんだ
「すごい…よくがんばったよ、葵ちゃん!」
「はあはあ…何言ってんですか、まだ1セット目ですよ」
その場にへたり込んだ葵ちゃんは凶暴な目をしていた 漏れはちじこまってしまったよ(;´Д`)
「早くストップウオッチ押してください…ハアハア、1分経ったら次のセットに入りますから教えてください」
「葵ちゃん、もう良いじゃないか、今日は…」
そのとき葵ちゃんは立ち上がった そうして漏れのほうにつかつかと歩いてきたよ
「はあはあ…あの、先輩」
「何…(;´Д`)」
あの怖い葵ちゃんだ マジで怖い (;´Д`)
「あんまり、萎えること、言わないでくださいよ」
「ご、ごめん」
「お仕置きしますから逃げないでくださいね」
漏れはその場にへたり込んでしまった 葵ちゃんの瞳が疲労の中にも爛々と輝いている
ああ また酷いことされる お仕置きされる
それは若干の期待がこもった予感だった
葵ちゃんはへたり込んだ漏れに覆い被さるように上体を傾けてきた そして
「逃げないでくださいね。ああ、お昼は学食でカレーライス食べましたっけ。藤田先輩、インド人も吃驚ですよ」
「葵ちゃ…なんのこ…うわあああっ!」
「いきますよっ!う…うげええええええええっ」
ゲロゲロゲロゲロゲー!
「うっ…!うげええええええええ!」
葵ちゃんは漏れを逃がさないように足元に置いて狙いを定めると漏れの顔面めがけて嘔吐を始めた
「げえええっ!うげええ!げえええええっ!」
びちゃびちゃと葵ちゃんの胃の中のものが漏れの全身にかけられる 酸味がかった悪臭があたりに立ち込めた
黄色いというか赤いというか ジャガイモのようななにかはお昼の未消化物なのだろうか
漏れは葵ちゃんのまだ暖かい胃液のシャワーを浴びながら半ば酔ったような心地になってしまったよ (;´Д`)
葵ちゃんのゲロを体中に浴びるなんて漏れはなんて幸せなんだろう !
すさまじい量のゲロ漏れに浴びせた葵ちゃんは何事も無かったようにスポーツドリンクで口をゆすいだ そしてゆすいだ液体まで漏れにかけてくれたんだ(*´Д`) !
「葵ちゃん…ごめん、余計なことを言って」
「判ればいいんですよ」
「それに、ありがとう、いっぱいかけてくれて」
葵ちゃんは満足げに笑うと再びスクワットラックに向かった 2セット目 葵ちゃんは何回のレップスをこなすのだろうか 漏れは葵ちゃんのゲロまみれになりながら葵ちゃんの雄姿を見守ったよ
そして葵ちゃんの地獄のようなトレーニングが終わった後 琴音ちゃんが現れたんだ 私服に着替え紙袋を下げた琴音ちゃんが…
そして漏れはとんでもないものを目撃することになる