メモ:知世の素敵な「死の棘」

 いのちからがら南方から復員してきたが、帰ってきた故郷は荒れ果てていた。連合国によって分割占領され、英国統治下となった友枝町。財閥は解体され、大道寺グループは消滅。大道寺の関係者は拷問にかけられた。
 知世ちゃんもなんの罪もないのに占領軍に捕らえられる。釈放された知世ちゃんは性格が一変しており、異常に僻みっぽく、疑り深い性格になっていた。
「あなた、あのときさくらちゃんに色目を使いましたよね。私覚えてますわ」
「そんなことはないよ、それは知世ちゃんの思い込みだよ」
「そうやってわたくしをだますのでしょう?あなたも世間の人たちと同じですわ」
「お願いだ、僕もそんな君を見ているのはつらい。もう、死なせてくれ」
「あら、自殺なさいますの?」
 とたんにおびえる知世。
「あなたが死ぬのでしたら、せめて私も一緒に。いいえ、あなたは死んではいけませんわ。せっかくニューギニアから戻られて、まだいろいろとなさりたいこともあるでしょうに」
 急にやさしくなる知世。どんなに詰っても心の深いところでは俺を愛しているんだ。
 酷いときには一晩中それを繰り返し、また丸一日眠り続けることもある。
 自分も戦闘神経症メジャートランキライザーが必要な身、自分が狂っているのか知世が狂っているのか。