誰よりも遠くにいってもここからまた笑ってくれる?

夕方、いつものように美凪が駅まで迎えに来てくれたよ
美凪が駅前に立っていると、外見はいつまで眺めていても飽きないくらいきれいだけれど、話をしてもほとんどカタコトでしか話せない
そんな美凪と、いつものように廃線跡を歩いて帰ることにしたよ
「段差があるから気をつけてね」
「アウアウアー」
美凪の手を引いて軌道敷を歩く。後遺症のためびっこを引いている美凪の足取りは危なっかしい
ふと美凪が足を止めた
軌道敷の中に子供たちが数人入って遊んでいる
その子供たちを美凪は空ろな目で見ている様子
と、子供たちが美凪を見つけ、いっせいにはやし立てた
「わあい、きちがいだ。きちがいのお姉ちゃんがいる」
「きちがいがであるいているよ」
「きちがいはせいsんびょういんにいけ」
漏れは一瞬キレそうになったが、美凪はなんとなく幸せそうに(表情の乏しい美凪だが漏れにはわかるのだ)手を振っているので我慢したよ

その夜漏れは美凪にハンバーグを振舞ってあげようとしたが、うまく作れなかった
料理上手だった美凪が台所に立つことはない
今も壁に向かってなにか独り言を言うのみだ

もし今度
もし今度美凪に一緒に死んでくれと頼まれたら


漏れは断ることが出来るだろうか…