大道寺知世です 今から 死にます

休日。知世ちゃんの部屋の前を通ると知世ちゃんが机に向かっている後姿が見えた。
なにか、カードのようなものを机に置いて頬杖をついている。
また、クロウカードのレプリカのようなものでも作っているのだろうか。しょうがないなあ。
ときどきさくらちゃんのことを思い出して泣いていることがあるので心配になって、僕は知世ちゃんに声をかけようと部屋に入った。
「知世ちゃん、お昼ごはんは…」
そのとき知世ちゃんが机の上に並べていたカードが目に入った。複雑な意匠のクロウカードやさくらちゃんカードではなかった。シンプルに縦書きで、マジックで文字が書いてある。
「さくらちゃん」
「受粉」
そうマジックで書かれた2枚のカードが並べてあり、それを知世ちゃんは一心に眺めていたのだ。
僕の無遠慮な入室に知世ちゃんは立腹したようで、カードをそそくさと隠すと黙って部屋を出て行ってしまった。


夕刻、知世ちゃんの部屋の前を通りがかるとやっぱり知世ちゃんはカードを前にして頬杖をついている。
僕はこんどはそうっと知世ちゃんの様子をうかがおうと肩越しにそのカードを見た。
「さくらちゃん」
「着床」
2枚のカードが並べてあり、知世ちゃんは僕に気づくこともなくその2枚のカードをいつまでも眺め続けていた。