大宇宙雪城帝国

雪城歴103年12月7日の日記
 「すべての男性はすべて男性器を破壊されるために存在する。すべての男性は虚勢不安におののきながら生活すべし」
 宇宙雪城刑務所に収監された受刑者たちは朝の唱和を終えると労働と教育にいそしむことになる。
 はくちょう座W星第6惑星衛星軌道上に設置された特設補給艦ドロットニング・ヴィクトリア艦内に置いて行われるそれはとても恐ろしいものだ。
 赤色巨星の赤い光とガンマ線バーストに照らされながら行われる船外作業、ヘリウム3の採取作業など、宇宙ドカタもはだしで逃げ出す過酷で危険な重労働の後、思想教育が行われる。

 そんななか私は、今上宇宙天皇雪城陛下によって人権、人格、思想を剥奪され、宇宙ドカタとして作業に従事するかたわら雪城さんの玩具として特訓を受けることとなった。まことに慈悲深い雪城さんは私を「特別指定自慰性具」として認定し、私の額に「私は奴隷です」と刻印を押した。
 その刻印の痛みに耐えながら私は至福のよろこびを得たのだ。雪城さんの指定自慰性具になるという愉悦。
 大宇宙雪城帝国では、男女間の交接は認められてはいない。身体の接触はおろか、すこしでも欲情したらその時点で男性の脳内に埋め込まれた思想矯正チップによって直ちに連邦警察に連行される。
 もっとも思想教育が行き届いた大宇宙雪城帝国で、そのような事態が発生するのは皆無だ。
 雪城さんの膣の深さにあわせて舌の延長手術を受けたため、年中舌をかみ続けている私は、今日も作業の後訓練室に入る。訓練室にはちょうど雪城さんの性器を模した特殊素材の容器があって、それに顔をうずめて5時間ほどぶっ通しで訓練を受けるのだ。
 蛇のように長い舌をその容器に這わせる。
 無論、欲情などするわけがない。ただ私の心のうちにあるのは雪城さんへの奉仕の気持ちだけだ。ああ、ああ。雪城さん。雪城さんこそ私の天皇。私の、わたくしだけの天皇陛下。ああ、ああ。わたしは天皇の赤子です。陛下のお役に立てて光栄です。ああ、おお、ああ。
 雪城さんの快感ポイントをつけば甘い汁が。不快なポイントをつけばのた打ち回る電撃が。
 そうやって雪城さんを悦ばすための特訓が繰り返される。
 この特別指定自慰性具の訓練場では、現在6万5千人の受刑者が訓練を受けている。一夜限り使い捨ての雪城さんの自慰のための道具として、雪城さんのすばらしい部分に舌を這わせる栄誉を授かった後処刑される日を夢見て、今日も宇宙の果てで激しい訓練を受けているのだ。
 ああ、ああ、雪城さん。雪城さん。わたしのこころはあなたのものです。わたしのからだはあなたのものです。わたしの生涯はすべてあなたのものです。ああ、おお、ああ。雪城さん、雪城さん。あなたこそこの銀河系宇宙でもっともうつくしく燃えさかる恒星であり、あなたこそこの宇宙の中心であり、法であり秩序だ。ああ、ああ、ああ。