名雪にもっとやさしくしてあげて(その2)

「秋子さんどうしたんですかこの痣は」
漏れはなんとなくためらいがちに尋ねた
秋子さんはあわてて首筋を隠したよ
そしてそっけなく言うんだ
「まあ、どうしたんでしょう」
その表情からは何も読み取れない
けれど一瞬だけ慌てたのは間違いない
「きっとどこかにぶつけたのね。うふふ、情けないわ」
にっこりと笑う秋子さん
「でも秋子さん、その痣メチャクチャ痛そうですよ!ちゃんと手当てを」
「祐一さん」
静かな、そして毅然とした声だった。それはすこし厳しい、けれど間違いなく秋子さんの言葉だった。
「私、痛みには慣れているんです。だからだと思います。昔から痛みには強いんですよ。ちょっとの怪我では痛くなんて、感じないんですよ」
「はあ…」
秋子さんはセーターの襟元でその痣を隠すようにし、コートを手に取った。
「とりあえず祐一さん、おあがりください。そうだ、部屋はちゃんと泊まれる様にしてありますからね」
そうさせて頂きます、そう言って漏れは遠慮なく靴を脱いだ とにかくいろいろ聞きたいこともあるしやらなければならないこともあるのだが、まずは雪に濡れた服を着替えないと
漏れは階段を上がり、元の漏れの部屋へ戻ろうとした。その時…

右手に名雪の部屋が見えた
入院中の名雪の部屋 あるじのいない部屋の前に、ペットボトルが置かれてある
「なんだよだらしない奴だな(;´Д`) 」
部活の時の飲み残しだろうか
そういえば猫よけにペットボトルを置くこともあるが…
名雪の病気は猫アレルギーか?ピロ除けだろうか そういえばピロの姿が見えない
500ミリのスポーツドリンクのペットボトルが無造作に3本、廊下に置かれてある
見ると地方限定の見たことのないスポーツドリンクのフレーバーだった

漏れはなんとなく手にとって見た
「レモン味か…?」
やや黄みがかったその液体はちょっと興味をそそった
(すまん名雪、一口もらうぞ)
漏れはちょっとその飲み物の味見をしてみることにした

「うわっ!(゚Д゚)ペッペッ!」
なんだか味のない、食塩水のような飲み物だった
「生理食塩水か…?(;´Д`)ちょっと飲んだけど大丈夫かな…」
なにか科学の実験でもしているのかあいつは

アホなことしているうちに寒気が走った
風邪を引く前にこの格好を何とかしないと
漏れはとにかく着替えることにして名雪の部屋の前を離れた