日記7

 午前中の配送が終わって、食事に行く。
 このところ昼は鹿追亭で摂っている。特に味がいいとか言うわけでもないが、海産や豚肉を中心としたボリュームのある食事を手ごろに出してくれるので、つい足が向くのだ。
 いつも目当てにしている、マスターの娘―多分大学生だと思う―にちょっかいを出したかったのだが、店を見渡しても見当たらない。
「マスター、お姫様は?」

 気難しそうに鹿追亭のマスターは答えた。
「貴様みたいな虫がつかないように、帝都にやった。もうお前の前にはあらわれないだろう」

 ほぼ満席だった鹿追亭(ただし辺境の安い飯屋なので席数も客層も推して知るべし)の客たちの半数以上が立ち上がった。
「なんだとこのクソ親父!」「てめえメシは…まあ、まあうまいけどな!でもな!」「うわああああ(ゲシュタルト崩壊)」
 
 阿鼻叫喚の状態となった。今日のランチはよくできたものだったが、何しろ人手が足りてない。当然配膳は遅れ気味だった。そのことと、ここの看板娘がいなくなったことで昼食はパニックになった。


 やれやれ、と首をすくめて、それでもきちんと平らげたポークソテーとエビのグラタンなどを平らげた。
 
 帰宅して知世ちゃんにこのことを伝えると。
「まあ、それでは私がお手伝い」

「 だ め だ!」


 鹿追亭のマスターの気持ちがすこしわかった気がした。