重たい病気の女の子を見舞うため、僕はともさんをつれて病院への坂を登っていた。
 途中まで階段だったのだがそれはエスカレーターになり、僕がまえ、彼女が後ろで静かにその坂を登って行った。
 ふざけたことにエスカレーターは途中で切れていて、急坂の終わりで電車の踏切があった。
 遮断機が下りていた。もうすぐ列車が通過するというのに、エスカレーターはまるで線路上に僕たちを押し出すように動き続けている。
 僕たちは電車が通過するまで一段一段坂を下りる動作を繰り返さなければならなかった。

 そのときふっと、僕の心にある考えが浮かんだ。
 「ああ、俺はこの踏み切りに飛び込まなければならない」
 振り返ってさっとあしを踏み出そうとすると、腕を掴まれた。ともさんだった。
 「邪魔すんなよ」
 ぶっきらぼうに言ったが彼女は何も言わない。
 彼女の腕を振り払って、僕は飛び込もうとした。
 
 遮断機はあがっていた。僕は死にぞこなったことを知った。
 
 病院について、僕たちは少女を見舞った。知らない女の子だった。5、6歳の子で、僕が微笑むととても嬉しそうにベッドの上で微笑んだ。
 そしてそばにいた彼女の近親者(両親?)に、僕の容色を褒めるようなことを言ってくれた。
 僕が顔を赤くしてその場で照れていると、
「何照れてんのよ、子供の言うことじゃない!」
 バカ受けしているともさんが僕の肩をばしばし叩いていた。
「バカお前、子供の言うこと舐めんなよ、子供はピュアなんだよ、子供が俺をイケメンっつたらイケメンなんだよ」
「バカじゃない?バカじゃない?バカじゃない?」 
 今度は頭をはたかれて、そこで夢は終わった。